投稿者 Chiaki YAMADA | 2026 10 4 | セルフコンパッション
誰かの言葉が頭から離れないときに——自分をいたわる時間
誰かに言われた言葉を、帰宅してからも何度も思い返してしまうことはありませんか。
「もっとこう言えばよかった」
「相手は、どういうつもりだったんだろう」
考えても答えが出ないのに、頭の中では同じ場面が繰り返される。今日は、私自身がそんなときに行った、セルフ・コンパッションの実践をお伝えします。
頭の中で、同じ場面を繰り返していた
仕事から帰った後、人から言われたある言葉と、そのときの感覚が離れなくなったことがありました。
「もっとこうすればよかったのかもしれない」
「相手は、こう思っていたのかもしれない」
起こったことを何度も振り返り、ぐるぐる考え続けるうちに、自分がますますつらくなっていることに気づきました。
「あ、今、同じことを何度も考えているんだな」
そこで、少し自分をいたわる時間を取ることにしました。
考えることから、身体や気持ちに気づくことへ
目を閉じ、ゆったりと呼吸をしながら、身体の感覚に意識を向けてみました。
胸がキュッと締め付けられる。
お腹には、硬いものがあるような感覚。
肩にも力が入り、頭も重い。
そして、その感覚とともに、後悔や傷つき、悲しさがあることに気づきました。
相手の気持ちや、自分がどうすればよかったかを考え続けている間、自分自身が傷ついていることには、十分に目を向けられていなかったのだと思います。
「今、こんなふうに感じているんだな」
すぐに何とかしようとせず、その感覚がそこにあることを認めながら、身体にそっと手を当てました。
身体に優しく触れるこの実践は、MSCでは「スージングタッチ」と呼ばれています。
呼吸を続け、手の温かさを感じながら、自分をいたわる時間を持ちました。
「私だけじゃないんだね」
すると、少しずつ身体の緊張が緩み、胸に温かい感覚が広がってきました。
「私も精いっぱい頑張っている。それでも、こんなことはあるよね。きっと他の人も、同じようなことがあったら、傷ついたり後悔したりするんだろうな。私だけじゃないんだね」
そんな言葉が浮かんできました。
誰にでもあることだから、気にしなくていい。
そう片づけるのではなく、傷ついたり後悔したりするのは、自分だけではないと感じられたのです。
頭の中の張り詰めた感じも緩み、少し視野が広がるように感じました。その後は、穏やかな気持ちでゆっくり休むことができました。

そのときの自分に、どんな支えが必要だろう
これは、私自身の一つの体験です。毎回同じように落ち着くとは限りませんし、そのときによって必要な支えも違います。
家族や友人、同僚に話を聞いてもらう。
自分のカウンセラーに相談する。
仕事で担当しているケースについてなら、スーパーバイザーに相談する。
あるいは、シャワーを浴びる、散歩に出かける、ゆっくり休む。そんな時間が必要なこともあります。
「今、私は何を感じているんだろう」
「今の私には、どんな支えが必要だろう」
そう問いかけながら、自分に合う方法を探していきます。
セルフ・コンパッションは、つらさを抱えている自分に気づき、思いやりをもって関わる姿勢です。誰かの力を借りたり、自分が置かれている状況を変えるために行動したりすることも、その一つです。
MSC8週間オンラインコースのご案内
マインドフル・セルフ・コンパッション(MSC)では、瞑想やエクササイズ、対話を通して、こうした自分への関わり方を学び、日常の中で実践していきます。
自分の状態に気づくこと。
自分に思いやりを向けること。
つらさや不完全さを経験するのは、自分だけではないと思い出すこと。
さまざまな実践を、8週間かけて体験していくコースです。
2026年10月8日(木)開始予定のコースは、本日10月4日(日)が申込締切です。
- 時間:毎週木曜日19:00〜22:00(日本時間)
- 形式:オンライン
- 内容:全8回+半日のリトリート
- 通常参加費:74,000円(税込)
全日程・割引対象・お申し込みはこちら
なお、最少催行人数に満たない場合は、開催を延期いたします。開催可否は10月5日(月)に、お申し込みの皆さまへメールでお知らせいたします。
参加にあたって確認したいことがありましたら、お気軽にお問い合わせください。
山田千晶
MSC講師・臨床心理士・公認心理師
投稿者 Chiaki YAMADA | 2026 06 10 | セルフコンパッション
頑張り続ける私たちに、セルフ・コンパッションができること――バーンアウトに関する2つの講演から
今年、バーンアウトとセルフ・コンパッションをテーマにした二つの講演に参加する機会がありました。
一つは6月にオンラインで開催された、セルフ・コンパッション研究の第一人者であるKristin Neff博士とChristopher Germer博士による講演会。
そしてもう一つは、8月にパリで開催されたChristopher Germer博士による対面でのワークショップです。
どちらもテーマは「バーンアウト」。
日々仕事や家庭、人を支える役割の中で頑張り続ける私たちにとって、とても身近なテーマだと感じました。
バーンアウトは「頑張りが足りない」から起こるのではない
疲れているとき、私たちはつい、
「もっとちゃんとしなければ」
「このくらいで弱音を吐いてはいけない」
「もっと頑張れば何とかなる」
と、自分をさらに追い立ててしまうことがあります。
けれど、心身がすでに消耗しているときに、自己批判によってさらに頑張ろうとすると、かえって回復から遠ざかってしまうことがあります。
二つの講演を通して特に印象に残ったのは、セルフ・コンパッションは単に「自分にやさしくして休みましょう」という考え方ではない、ということでした。
まず、
「今、自分には何が起きているのだろう?」
と気づくこと。
そして、
「今の自分には何が必要だろう?」
と、自分自身に問いかけること。
必要なのは、休むことかもしれません。
誰かに助けを求めることかもしれません。
これ以上引き受けないように境界線を引くことかもしれません。
あるいは、自分にとって大切なことのために、勇気をもって行動することかもしれません。
セルフ・コンパッションは、いつも自分を甘やかすことではなく、その時の自分に本当に必要なものを見極め、応答していくことなのだと、あらためて感じました。
「やさしさ」と「強さ」の両方
セルフ・コンパッションというと、「自分を慰める」「自分にやさしい言葉をかける」といった柔らかな側面が思い浮かびやすいかもしれません。
けれど、ときには、
「これはもう抱えきれない」
「助けが必要だ」
「ここにはNOと言う必要がある」
と認めることも、セルフ・コンパッションです。
自分を守るために境界線を引いたり、状況を変えるために行動したりすることも含まれます。
バーンアウトというテーマを通して、セルフ・コンパッションには、自分をいたわるやさしさと、自分を守り行動する強さの両方があることを改めて考えさせられました。
パリでChris Germer博士にお会いして
8月のパリでの講演では、Chris Germer博士のお話を直接聞くことができました。
長年セルフ・コンパッションを研究し、世界中で伝えてきた方ですが、実際にお会いすると、とても温かく、穏やかで、まさにloving-kindnessを体現しているような方でした。
翌日にはMSC講師向けの集まりにも参加し、Chris博士やフランスをはじめとするヨーロッパのMSC講師たちと、MSCをどのように社会に届けていくかについて話し合う機会もありました。

*2026年8月、パリでのワークショップにてChris Germer博士と
バーンアウトは、個人が「もっと上手にストレス管理をすればいい」という問題だけではありません。
職場環境や人間関係、役割の負担など、周囲の環境も大きく関係します。
だからこそ、セルフ・コンパッションを通して自分自身を支えることと同時に、
「自分に何が必要なのか」
「何を変える必要があるのか」
に気づいていくことも大切なのだと思います。
「もっと頑張る」以外の選択肢を
私自身も、以前は自分を批判することで成長できると思っていました。
できていないところを見つけては、
「もっと頑張らなければ」
と自分を奮い立たせる。
けれど、その方法だけでは、いつまでも心が休まりませんでした。
セルフ・コンパッションを学ぶ中で、
自分を責めなくても、自分を支えながら前に進むことはできる
ということを少しずつ体験してきました。
今回、オンラインとパリで二度にわたってバーンアウトについて学び、改めて、
「頑張ることをやめる」のではなく、
「自分を傷つけながら頑張ることから降りていく」
ということが大切なのではないかと感じています。
疲れているとき。
うまくいかないとき。
心に余裕がなくなっているとき。
そんなときに、
「もっと頑張らなきゃ」ではなく、
「今の私には何が必要だろう?」
と立ち止まる。
その小さな問いかけが、自分自身との関わり方を変えていく一歩になるのかもしれません。
10月8日から開催するMSC8週間オンラインコースでも、「今の自分には何が必要だろう?」という問いを大切にしながら、困難なときに自分自身を支えるさまざまな実践を、8週間かけて体験していきます。
9月26日(土)には無料体験説明会も予定しています。
https://peatix.com/group/16460018
【無料オンライン講演会のご案内】

セルフ・コンパッション(自分への思いやり)の研究と実践を世界に広めてきたクリスティン・ネフ博士とクリストファー・ガーマー博士によるオンライン講演会が開催されます。
今回のテーマは「バーンアウト(燃え尽き)」。
頑張り続けているのに疲れが取れない、自分に厳しくしすぎてしまう、そんな現代人が抱えやすいテーマについて、セルフ・コンパッションの視点からお話しされます。
日時:2026年6月10日(水)19:00~20:30(フランス時間)
※日本時間:6月11日(木)午前2:00~
※録画視聴(リプレイ)あり(英語・フランス語)
参加費:無料
詳細・お申し込み:
https://www.billetweb.fr/rencontre-avec-kristin-neff-et-christopher-germer
投稿者 Chiaki YAMADA | 2023 11 15 | セルフコンパッション
マインドフル・セルフ・コンパッション(MSC)を教えるためのMSC講師養成研修のためにフランスの田舎で1週間の合宿に参加してきました!
MSCでは言葉での情報を得るというよりも、体験をより大切にしています。たくさんの個人・小グループ・大グループのワークや瞑想などがある体験型の学びです。
プログラム自体がよく作られていて、安心安全な感覚をまず作って、自分の体と心とつながるワーク、その後他の参加者と安心安全な環境でつながる機会があるので、あたたかくてリラックスした体と心で1週間を過ごすことができました。
フランス語でフランス人の中に混じって学ぶとなるとフランスに留学していた大学院時代を思い出します。
言葉が全部は分からず自信が持てない状況でした(今もネイティブのようにはいきません)。
授業中に先生が一方的に話すのを必死にノートに取るけれど、話がどんどん進みついていけず、「こんなんで本当に単位が取れるのか私」と不安になったり。
テスト前に、自分のノートを見ても情報が中途半端すぎて復習できず、「何をしていたんだ私」と自己嫌悪になったり。
周りの学生に頼んでノートを貸してもらってもフランス人の手書きの字が読めなくて困惑。「ノートも読めないなんてもう終わってる」とさらに落ち込んだり。
なんとか卒業はできたものの、不安・恐れの中で爪先立ちでそろそろと歩きながら緊張しながら学んでいたなと思います。
今回も同じように不安・緊張の中で学ぶことになるのかもしれないと思っていました。
しかし、MSCでの学びは全く違いました。
最初から自分の体や心とつながり、周りのことよりもまずは自分を大切にすることを学びます。そして、自分が安心して、心地よく感じるために必要なことをみんなで出していきます。カウンセリングなどの場でも大事にされる秘密を守る、批判しないなどがありますが、特に
「違いを尊重する」が私にとっては響きました。
自分はグループに属さないという感覚が安全ではない、孤独な感覚だということ。その感覚は誰もがもったことがあること。自分だけじゃなかったんだ!と感じられ大きく感情が動きました。
誰もグループから自分は外れているという感覚にならないように、安心安全を感じられるように皆で取り組みましょうという共通認識を持てたのが驚きでした。それだけ、日々の生活の中で外国人として「マイクロアグレッション」を受けてきていたんだなと自分の痛みに気づくこともできましたし、その痛みをやわらげることもできたように感じました。
私にとっては、とてもありがたい・あたたかい、これまでとは違う感覚で学ぶことができました。
この感覚を持ちながら学べるこのプログラム、すごいなと思いますし、この安心・安全、あたたかい感覚を持ちながら生きていくこともできるんだということを、たくさんの人に知ってほしいなと思っています。今後はカウンセラーとして個人の方々をサポートする他にもMSC講師としてプログラムやセルフコンパッションについて広めていけたらと思っています。
よろしくお願いします!
山田ちあき MSC講師(MSC Teacher in training)
臨床心理士・公認心理師・Psychologue
参考文献;『マインドフル・セルフ・コンパッション プラクティスガイド』〔2022〕